介護職にとって「やりがい」とはなにか。自分たちが作り上げたレクリエーションが要介護者に喜ばれた時、または話しかけても反応がなかった方が、何かのきっかけでこちらを向いてくれた時、介助の際に「ありがとう」「頑張ってね」「起こすの上手くなったな」といった感謝やねぎらいの言葉、努力を認めてくれた時。いずれにしても、これまでの自分自身の苦労や行いなどが認められたと感じる時ではないだろうか。そういったある種の自己承認欲求を満たせると同時に、要介護者の自立やADLの向上あるいは低下防止といった現実的な利益にもなっている。仕事をする上でそのような関係が成り立つうちはストレスも少なく働けるだろう。
しかし、介護の仕事はそう簡単にやりがいが得られるものではない。対人サービス業であると同時に、サービスを提供する顧客が認知症など何らかの障害を持っており、意思の疎通ができないケースがあるからだ。そこに起因したトラブルが多くの介護職員を疲弊させている。
例えば食事や排泄などの介助を拒否する援助困難者。彼らの介助を済ませないと他の仕事ができないが、ほとんどの現場ではギリギリの人員で回しているため応援がいない。しかも仕事を進めないと他の職員から責められる。そういった焦りから無理な介助や虐待まがいの行動につながり、それが事故や事件に発展したり家族からのクレームにもなることがある。
また、認知症の利用者からの暴力や暴言も多い。夜勤明けなどの肉体的・精神的に疲労した状態で暴言を浴びせられることは職員にも強いストレスとなり、うつや不眠の原因にもなりうる。さらに要介護者からの暴力で負傷しても「あなたの対応が悪い」と労災として認められないこともあるのだ。介護職員と要介護者間とのトラブルで心も身体も限界に感じたらストレスの少ない環境に変更することも一つの手だ。